「チョットイイデスカ?」の外人東京には外人が多い。 今では珍しいとも思わないが、地方から出てきた時は、外人が珍しかった。 小学生の頃は外人という定義は、映画の中で出てくるカウボーイ役の俳優と 「奥様は魔女」のエリザベスモンゴメリーと 「サンダーバード」のペネロープや バージル、アラン、スコット、パーカーのことだった。 長崎に修学旅行に行った時、外人を初めて見て、訳がわからずサインを貰ってきた非国民がいたぐらいだ。 ちなみにここでいう「外人」とは、「白色人種」のことである。 これは明白な事実である。 日本人が「外人」と言う場合は「白人」のことであり、 「外国人」という時は「日本人でないすべての国の人」という意味になる。 「外国人」の中をさらに区別して言う場合、 「黒人」、「中国人」、「韓国人」、「フィリピン人」などと言う。 「外人」はイギリス人であろうと、オランダ人であろうと「外人」で括られ区別されない。 差別用語ではないが、中国人のことは「外国人」とは言うが、「外人」とは言わない。 これは国語辞典にも書いてない、日本人の暗黙知である。 だから、初めて外人=白人から声をかけられると舞い上がってしまうのもおわかりだろう。 なにせテレビの中でしか会った事のない異民族と話すことになるのだから・・・・。 もちろん、英語ではない。そんな語学力があったら、外人に舞い上がったりはしない。 日本語である。
「チョットイイデスカ?」 それも端正な甘いマスクをした若い白人青年である。 銀幕から抜け出してきたかのようだった。 何故、わたしに話し掛けてきたかというと、その外人が街頭で配っていたパンフレットを受け取ったからである。 わたしは、外人に悪い人間はいないと信じていたし、何を配っているか興味も少しあった。 外人はパンフレットを開きながらにこやかに話し掛けてきた。 「コノ子達ヲ見テクダサイ。」 見ると、栄養失調で腹だけがぽっこり出た難民の子供たちの写真だった。 「コノ子達、カワイソウデスネ。」と同意を求める。 断っておくが、すべて日本語である。多少、片言ではあるがまぎれもない日本語だ。 わたしは、「外人」の容姿で圧倒されてしまい、英語で答えねばと思った。 (アメリカ人かイギリス人とも言っていない。フランス人かもしれないのにである) 「イエ〜ス。」・・・やっとそれだけ言えた。初めての英会話である。 「コノ子達、5百円アルト、1ヶ月食ベルコトガデキマ〜ス。」 聞き取ることが出来た!(くどいようだが、日本語で話している) 「イエ〜ス。」 「コノ子達ノタメニ、5百円イイデスカ?Do you understand?」 最後の方は、確かに英語である。 間違っても、「行灯スタンド」ではない。 これは日本国民の国際貢献が試されているのだと感じた。 今ここでわたしが日本国を代表して5百円を出さねばと使命感を感じていた。 わたしは、財布に手を伸ばした。あいにく千円札しかなかった。 「お釣りもらえますか?」(さすがに英語でどう言えばいいのかわからなかった) 「Oh!Thanks.千円イイデスカ?」 「えっ?」 「千円アレバ、コノ子達、2ヶ月食ベレマ〜ス。」 わたしは迷った。わたしだってこの千円で5日は食べられるのだ。 お金には困っていた。 しかし、素直にうなずく自分がいた。 「Oh!You are good boy. bye」 と言って外人はわたしの肩を叩いてくれた。 わたしは生まれて初めて外人と体を接触したことになる。 経済的負担はあったが、わたしはいいことをしたのだ。 そう思って、もらったパンフレットを握り締めて、下宿へ帰った。
インスタントラーメンを食べながら、そのパンフレットを見て 愕然とした。 そのパンフレットは、表紙こそ難民の子供だったが、 内容は、カルト宗教の宣伝の文字が並んでいたのだ。 わたしはあろうことか信心してもいない宗教にお布施をしてしまったのだった。 |
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