会社に来たヘナチョコ詐欺師
会社の中に入り込んでくるヘナチョコ詐欺師もいる。
個人を狙う詐欺師は、1対1の対応ですむが、
会社の事業所の中に入ってくるとは、チャレンジャーである。
リスクが高い反面、はまると、大量のカモがかかってくるので、
うまみもある。
でも、最近はセキュリティなど厳しくなり、
ずいぶん減ってしまった、寂しい限りである。
以前、会社に来た詐欺師の事例を2つ紹介しよう。
健康食品
わたしは新入社員当時、工場に勤務していた。
昼食時間には、社員食堂があり、
毎日そこに与えられた食券を持って、食べに行く。
ある日、食堂のドアを開けると、
大きな声で何か喋っている男が2人いた。
何だろうと、見ると、
一人は背広を着ていて、もうひとりは白衣を着ていた。
大声でがなりたてていたのは、背広の男である。
「このたび、○○先生が開発されましたこの食品は、
効能がこれこれで・・・・、健康に良く、持病の糖尿病や・・・・。」
どうやら、健康食品の説明を大声でやっている。
だが、あまりに大声なので、食堂中に反響して、何を言っているか聞き取れない。
一方、先生と紹介された白衣の男は、対照的に、ふんぞり返って、黙って立っている。
やがて、背広のほうの大声の説明が終わり、
「それでは健康食品の権威でいらっしゃいます、○○先生をご紹介します。
○○先生、どうぞ。」
「えー、ただいまご紹介に預かりました、○○です。」
そこから、「先生」の健康食品の説明が始まる。
結果はどうだったか?
おそらくまったく売れなかったに違いない。
場所の選択を間違っていたのだ。
この食堂は、3交替の夜間勤務の工員さんがほとんどである。
工員さんたちは、ご飯を食べたら家にそそくさ帰るのだ。
説明を聞いている暇なんかない。
ホワイトカラーの人も何人かいるが、あんなミエミエの学術理論が
こころに響いたはずはなかった。
誰が見ても、営業マンふたりの茶番劇である。
百科事典
わたしは2度ほどこの百貨辞典販売に遭遇した。
一度は工場勤務時代。 二度目は本社の営業部時代だ。
どこの会社でもそうだが、
事業所で売り込みをやるからにはしかるべき部署に許可を得ることが必要だ。
まず、許可を与える担当者につけいるやり方が巧妙である。
これは訪問販売をやっている方は学んだほうがいい。
彼らの営業戦略は、こうだ。
名刺に、有名出版社の名前が刷り込んである。
有名出版社の商材(百科事典)を扱っていることで信用させる。
発行元の出版社もこういうセールス手法をとっているとは知らずにいる販売店なのに・・・。
いざセールストークを始めても、セールスではないということを強調する。
「自分は社員の皆さんに自己啓発の情報提供する立場である。」ことを強調する。
また、工場と本社ではやり方が違う。
工場の場合は、総務課、庶務課の課長さんを狙う。
「本社のほうに話を持っていったら、工場の総務課長さんにすべて任せてあるということで・・・」と接近する。
ついては、自己啓発についてどう取り組んでいくべきか説明会をやりたい。
決してセールスではないので、総務課の女性も含めて参加していただきたい。
昼休みに会議室を貸してほしい。
・・・ということを言葉巧みに、総務課長さんのプライド(窓際の課長さんはほめられると乗りやすい)もくすぐりながら、お願いする。
工場勤務の人は、田舎に住んでいるし、食費や背広代もかからないので、本社の人よりも可処分所得が高い。
本社採用の事務系の社員もいるが、本社に比べて情報が少ないので、こういう話には乗ってきやすい。 特に本社の人事から「本社でもやっている」と聞かされたらなおさらである。
特に事務屋さんの場合、本社から飛ばされたという危機感もあるのだ。
本社の場合は、何と営業部長を狙う。
営業部長に当たりをつけておき、
「人事部の方から、こちらで新人育成をされていると紹介されたものですから。」
と持っていく。 (注:本当は人事の女子社員とロビーで立ち話した程度)
本社で狙うのは、独身貴族の前途有望な(自己啓発にお金を使いそうな)新入社員である。
当時は今と違って、若い営業社員が数名見習いで本社配属されているものだった。
営業部長は、出版社のブランドと人事部からの紹介(もちろん嘘っぱち)、それと面倒くささから、自分の部下の課長さんに話すように言う。
これで、「許可がおりた」ことになってしまう。
課長さんは、部長さんから言われたら、そのまた下の新人を紹介せざるを得ない。
かくして、わたしと同期のもうひとりが、終業後に百科事典のセールスを受ける羽目になる。
(部長も課長も人事から紹介された自己啓発の一環と信じきっている)
受ける立場の新人はまったくヒヨッ子である。
偉い部長と課長からのオーラを背負ったセールスマンに簡単にだまされてしまう。
わたしには工場時代の免疫があったので、下記の”商談”は受けずにすんだ。
本社でも工場でもセールストークの内容がまったく同じだったのだ。
次のような内容である。
他の会社の事業所も回っていることを強調する
説明の途中に簡単なクイズを出す。正解すると、ちょっとしたもの(布製の財布だったり)を即座にプレゼントする。
3年ローンで一日コーヒー1杯分だと、経済的負担が少ないことを強調する(そういえば保険もコーヒー1杯分だったなあ)
カラーボックス(注:チープな組み立て式の3段ボックス)に収まるサイズ(百科事典は飾るものではないですよ。有効に使うものですよ。そんなに場所はとりませんよ、ということ)
特殊な用紙で濡れない、破れない
背表紙が特殊で反対に折り曲げても、綴じ目がとれたりしない
当時はパソコンもCD-ROMもなかったし、現在のようなCD-ROMベースの百科事典もない。
インターネットで検索するなんて発想もない。
独身時代に買ってしまったあなた。
百科事典は、今も部屋の片隅のカラーボックスに鎮座しているだろうか?
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