わたしのエッセイ 5

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直線とスパイラル

 

その昔、あるERPパッケージ(企業の基幹業務を扱う統合ソフトウェア)開発に携わっていた頃、

 

そのパッケージのシステム開発手法は、「スパイラル方式」であると言われておりました。

 

プロトタイプという開発モデルを何度も回して、修正改良を加えていくという意味です。

 

スパイラル、つまり、らせん状に何度も同じことをやりながら、

 

しだいに高度なものになっていくということです。

 

 

従来のシステム開発は、要件定義→作りこみ→テスト→本番稼動と直線的な流れになり、

 

これはウォータフォール型開発と呼ばれています。

 

 

 

我々はいろんな物事の将来を予測するのに、過去の傾向から直線的に考えてしまう傾向があります。

 

昨日、2だったものが、今日4になると、明日は8、少なくとも6にはなると考えてしまいます。

 

定量的なもの、株価だったり、経済成長率だったり、平均寿命などです。

 

定性的なものでも、

 

家電品は、後から買うほど機能的で安くなる。

 

校内暴力や青少年犯罪は、これからもどんどんひどくなる。

 

そう考えてしまいがちです。

 

 

 

本当にそうでしょうか?

 

 

「ものづくり」の視点から、直線でものを考えてはいけないと思う事例を最近、ふたつ、目にしましたので、ご紹介します。

 

 

一つ目は、先日の朝日新聞の記事です。

 

キャノンの高級デジタル一眼レフカメラは、どうやって作られているかご存知ですか?

 

ハイテクロボットが工程ごとに部品を組む??

 

 

いいえ。

 

セル方式といって、熟練工ひとりが、すべての部品を手作りで仕上げるのです。

 

大分に工場があります。

 

この方が、流れ作業よりも効率的で、熟練工を育てることが、従業員のモチベーションも上げるというのです。

 

 

ベルトコンベアーの流れ作業で大量生産するという生産方式は フォードの自動車工場で始まりました。

 

合理化を直線的に描いていると、ロボットでの流れ作業の精度向上という発想は出ても、こういう発想は出てきません。

 

家内手工業の手作り→ベルトコンベア流れ作業→セル方式の手作り

 

つまり、これは「スパイラル」なんです。

 

 

 

もうひとつの事例は、サプライチェーンのセミナーで聞いたものです。

 

100円ショップのダイソーの事例です。

 

 

ダイソーで売られている数々のプラスチック製品。

 

ダイソーは今や日本一のプラスチック製品販売会社です。

 

では、ダイソーのプラスチック製品は、どこで作っていると思いますか?

 

中国? ・・・いいえ、日本の静岡県清水市です。

 

ダイソーは既に中国生産から撤退してしまいました。

 

確かに生産コストは安いですが、大量ロットで買い付ける必要があります。

 

不良在庫を抱えるリスクもありますし、日本への配送コストもあります。

 

ダイソーは日本のアンテナショップと言われる静岡県で、多品種少量生産を繰り返しています。

 

かといって、新製品を出すわけではないのです。

 

 

顧客のニーズに合わせた、仕様変更を日々行っています。

 

顧客のニーズにより、例えば、ボールペンのグリップの色や材質を変える。

 

そういうことに小回りが聞く日本での生産に回帰しているのです。

 

 

 

直線的に考えると、

 

 

「コストダウン要求→海外調達→海外生産拠点→日本産業の空洞化」

 

ですが、

実際には、ここでもスパイラルによって、日本回帰現象が起こっています。

 

フランスのジダンの華麗なドリブルのように、らせん状の発展というのは、美しいものですね。

 

(2005年7月執筆)

 

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