直線とスパイラル
その昔、あるERPパッケージ(企業の基幹業務を扱う統合ソフトウェア)開発に携わっていた頃、
そのパッケージのシステム開発手法は、「スパイラル方式」であると言われておりました。
プロトタイプという開発モデルを何度も回して、修正改良を加えていくという意味です。
スパイラル、つまり、らせん状に何度も同じことをやりながら、
しだいに高度なものになっていくということです。
従来のシステム開発は、要件定義→作りこみ→テスト→本番稼動と直線的な流れになり、
これはウォータフォール型開発と呼ばれています。
我々はいろんな物事の将来を予測するのに、過去の傾向から直線的に考えてしまう傾向があります。
昨日、2だったものが、今日4になると、明日は8、少なくとも6にはなると考えてしまいます。
定量的なもの、株価だったり、経済成長率だったり、平均寿命などです。
定性的なものでも、
家電品は、後から買うほど機能的で安くなる。
校内暴力や青少年犯罪は、これからもどんどんひどくなる。
そう考えてしまいがちです。
本当にそうでしょうか?
「ものづくり」の視点から、直線でものを考えてはいけないと思う事例を最近、ふたつ、目にしましたので、ご紹介します。
一つ目は、先日の朝日新聞の記事です。
キャノンの高級デジタル一眼レフカメラは、どうやって作られているかご存知ですか?
ハイテクロボットが工程ごとに部品を組む??
いいえ。
セル方式といって、熟練工ひとりが、すべての部品を手作りで仕上げるのです。
大分に工場があります。
この方が、流れ作業よりも効率的で、熟練工を育てることが、従業員のモチベーションも上げるというのです。
ベルトコンベアーの流れ作業で大量生産するという生産方式は
フォードの自動車工場で始まりました。
合理化を直線的に描いていると、ロボットでの流れ作業の精度向上という発想は出ても、こういう発想は出てきません。
家内手工業の手作り→ベルトコンベア流れ作業→セル方式の手作り
つまり、これは「スパイラル」なんです。
もうひとつの事例は、サプライチェーンのセミナーで聞いたものです。
100円ショップのダイソーの事例です。
ダイソーで売られている数々のプラスチック製品。
ダイソーは今や日本一のプラスチック製品販売会社です。
では、ダイソーのプラスチック製品は、どこで作っていると思いますか?
中国? ・・・いいえ、日本の静岡県清水市です。
ダイソーは既に中国生産から撤退してしまいました。
確かに生産コストは安いですが、大量ロットで買い付ける必要があります。
不良在庫を抱えるリスクもありますし、日本への配送コストもあります。
ダイソーは日本のアンテナショップと言われる静岡県で、多品種少量生産を繰り返しています。
かといって、新製品を出すわけではないのです。
顧客のニーズに合わせた、仕様変更を日々行っています。
顧客のニーズにより、例えば、ボールペンのグリップの色や材質を変える。
そういうことに小回りが聞く日本での生産に回帰しているのです。
直線的に考えると、
「コストダウン要求→海外調達→海外生産拠点→日本産業の空洞化」
ですが、
実際には、ここでもスパイラルによって、日本回帰現象が起こっています。
フランスのジダンの華麗なドリブルのように、らせん状の発展というのは、美しいものですね。
(2005年7月執筆)
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