わたしのエッセイ 1

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半歩先行く技術

 秋葉原や量販店の電気屋によく行くのですが、最近、デジタルカメラが百花繚乱という感じで覇を競っています。

 

今を去ること20年前、わたしが工場勤務の頃、朝礼で工場長が、 「フィルムの無いカメラができる時代になりました。」というお話をされたことを思い出しました。

すでにその頃から技術としてはデジタルカメラは存在したのです。 にもかかわらず、デジタルカメラが長い間忘れ去られていたのは、 当時デジタルカメラが市販されたとしても、消費者がどうやって使ったらいいかわからなかったということが一番大きいでしょう。

今(注:4年前)、急に脚光を浴びているのは、パソコンの家庭への普及があって、画像を取り込む環境が整ったということが言えます。

デジタル画像を読み取り、加工したり、印刷できたりという機能が整ったことで普及することができたのでしょう。

 

これに比べれば、携帯電話の普及はもっと短期間でした。

携帯電話の場合は、「電話が単体で外へ持ち出せる」という非常にわかりやすいコンセプトです。 携帯電話を買いたいと思う人は、「携帯電話を使えば、外出先でも電話ができる。」という具体的なメリットのイメージが湧くので購入するのです。

 

この2つのことから言えるのは、商品が普及するか否かは、 「周辺環境の整備」と「消費者がメリットをイメージできること」だと思います。

(注:このエッセイは2000年ごろ書いたものです。多少古い。)

デジタル家電の業界では、「紐、皿、石」という言葉があるそうです。

これは、音声・画像などの情報記録媒体の変遷を指している言葉です。

「紐」とは、カセットテープ、ビデオテープ、写真のフィルムなどのテープをのことで、

「皿」とは、MD(光磁気ディスク)、CD、CD-ROM、HDD(ハードディスク)などのディスクです。

「石」というのは、半導体メモリのことで、これからの主流になるデジタルカメラや携帯MP3用のスマートメディアなどを言います。

消費者は気まぐれで新しいもの好きで、自分と同じ歩幅で歩くものには見向きもしません。 今更「ラジカセに使う高性能のカセットテープですよ。」と宣伝してもインパクトはないですよね。

ところが、2歩先の技術を宣伝して

「半導体に記憶させる音声記録方式でMPEG3方式と同等のファイルサイズですが、 広帯域の音質に優れ、インターネット経由で・・・」とやっても、購買欲をそそられる消費者がどのくらいいるでしょうか?「カセットより、コンパクトで、デジタル編集できるMD」というのが、現時点で消費者より「半歩先」を歩く技術でしょう。「皿」を見ながら、「石」がちらついている状況です。

(注:これももう現実の社会になりましたね)

 

これは先輩の言葉ですが、「人間というのは、自分が理解できる知識の範囲でしか物事を理解できない。」ということを教えていただいたことがあります。

「半歩先」というのは、言い換えれば、「消費者が理解できる範囲で、今までよりメリットを理解できるもの」ということでしょう。

勿論、研究者自身は、2歩も3歩も先の技術を追いかけていなければならないでしょうが、

商品として世の中に出る時には、「2歩先を目標に半歩先を歩く技術を小出しにしていく」というのが、 大事ではないでしょうか?

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